カルテとレセプトの違いとは?

これまでカルテ・レセプトについて当然のように触れていましたが、今回はカルテ・レセプトについてもう少し詳しくまとめてみます。

カルテとは、医師が患者の病状・処置・経過等を記録したものを言います。医療法では診療録と言われます。

診療録は、広義には手術記録・検査記録・看護記録等を含めた診療に関する記録の総称をいう場合もありますが、医療法では医師が診療に関する事項を記載したものという狭義の意味で使われています。

医師法第24条で、医師が診療をしたときは遅滞なく診療録を記載することとされ、同第24条2項で5年間の保存義務が定められております。

一方、診療記録は、病院日誌、各科診療日誌、処方せん、手術記録、看護記録、検査所見記録、エックス線写真、入院患者及び外来患者の数を明らかにする帳簿等を言い、医療法施行規則第20条10項で2年間の保存義務が定められております。

医療現場では一般にカルテと言われ、一昔前は書面で作成され、大病院等では膨大なカルテが保管されていました。しかし、最近では電子カルテシステムが普及し、カルテはデータ作成され、電子カルテとしてデータで保管する病院が多くなりました。

また、オーダーリングシステムというシステムもあり、検査、リハビリ、レントゲン等の指示を医師が入力して、そのデータが関連部署に届くことで関連医療職等に知らせるシステムのことを言います。

一般的に、電子カルテシステムはオーダーリングシステムと連動し、医師が電子カルテシステムに入力することで関連部署に指示のデータが飛び、作業の効率化が図られております。

レセプトは、患者が受けた保険診療について、医療機関が保険者(市町村や健康保険組合等)に請求する診療報酬の明細書のことを言います。

医療行為、薬剤、一部の診療材料には保険点数が定められており、医療機関はレセプトにより患者の月間診療報酬点数を請求することができます。

診療報酬点数は、厚生労働省が定めた診療報酬点数表によって、全国一律に決まっており、1点は原則10円(入院の食事代等は除く)です。医療費の一部(年齢等により1~3割)は自己負担として支払い、残りは保険者(公的医療保険)から支払われます。

レセプトの保存義務は特に定めがないですが、保険請求の民事上の消滅時効期間は最低でも保管しなければならないと考えられています。

病院窓口で患者の医療費(診療報酬点数)を計算しますが、最近では電子カルテとのデータ連動により、医事会計システム(レセプトコンピュータ)が自動的に医療費を計算してくれます。

病院等は、患者の月間の保険点数をレセプトという形で集計して、保険者に請求しています。こちらも一昔前は紙のレセプトを提出していましたが、最近では電子レセプトという形でデータにより提出する場合が多くなりました。

このようにカルテは診療に関する記録を記載し、レセプトはそれを診療報酬点数に変換したものということができます。

両者は診療行為の記録資料という意味では共通しますが、前者は診療行為に関する記録を残して後日の参照資料や訴訟等の疎明資料にするなどの目的で作成されるのに対し、後者は診療行為等の対価として保険者に請求する目的で作成されるという違いがあります。

病院関係者以外から見ると、両者は病院で作成される資料として混同されがちですが、厳密には全く違う目的で作成されています。

レセプトは請求明細ということを覚えていれば、両者の区別がつくようになるのではないかと思います。