事業承継税制(個人版事業承継税制#8)

前回は事業承継税制の個人版事業承継税制の相続税に係る納税猶予・免除制度の①個人事業承継計画の策定・提出・確認→②相続開始についてまとめましたが、今回は個人版事業承継税制の相続税に係る納税猶予・免除制度の③相続税の申告期限までの間→④相続税の申告期限について書いていきます。

上記の③相続税の申告期限までの間について、前回書いたように(A) 後継者(相続人等)の要件、(B) 先代事業者等(被相続人)の要件を充足している場合、都道府県知事に「円滑化法の認定」を受ける必要があります。あわせて、事業承継後、一定期限までに、開業届出書の提出・青色申告の承認を受け、相続税の申告期限までに制度適用に関する相続税申告書と一定書類を税務署へ提出するとともに、納税猶予の相続税額および利子税額に見合う担保を提供する必要があります。ここで、「一定期限」とは、開業届出書は事業開始日から1ヶ月以内に税務署に提出、青色申告承認は先代事業者の死亡日(相続開始を知った日)から所定の期間内(例えば死亡日が8月末までなら4ヶ月以内)に税務署長に申請、を行う必要があります。なお、後継者が相続前から他業務を行っている場合は、青色申告する年の3月15日までに申請を行うことが必要です。

上記(A)・(B)における、この制度の適用を受けるための要件としては、以下が挙げられます。

まず、(A) 後継者(相続人等)の主な要件として、(a) 円滑化法の認定、 (b) 相続開始直前に特定事業用資産に係る事業(同種・類似の事業等を含む)に従事(先代事業者等が60歳未満で死亡した場合を除く)、(c) 相続税申告期限までに開業届出書提出・青色申告承認(見込含む)、(d) 特定事業用資産に係る事業が資産管理事業・性風俗関連特殊営業でない、(e) 先代事業者等からの相続等による財産取得者が、特定事業用宅地等について小規模宅地等の特例の適用を受けていない、が挙げられます。ここで、「資産管理事業」とは、有価証券、自ら使用していない不動産、現金・預金等の特定資産保有割合が特定事業用資産の事業に係る総資産総額の70%以上となる事業(資産保有型事業)や特定資産からの運用収入が特定事業用資産に係る事業の総収入金額の75%以上となる事業(資産運用型事業)を言います。

なお、(e)に関して、先代事業者等(被相続人)に係る相続等により取得した宅地等について小規模宅地等の特例の適用を受ける場合、個人版事業承継税制の適用が、(イ)特定事業用宅地等:適用不可、(ロ) 特定同族会社事業用宅地等:「400㎡-特定同族会社事業用宅地等の面積」、 (ハ) 貸付事業用宅地等:「400㎡-2×(特定居住用宅地等の面積×200/330+特定同族会社事業用宅地等の面積×200/400+貸付事業用宅地等の面積)」、といった制限を受けます。

次に(B) 先代事業者等(被相続人)の主な要件として、[被相続人が先代事業者の場合] 相続開始年、前年および前々年の確定申告書を青色申告書により提出、[被相続人が先代事業者以外の場合] (a) 先代事業者の相続開始・贈与直前に先代事業者と生計一親族、(b)先代事業者からの贈与・相続後に開始した相続に係る被相続人(先代事業者からの贈与・相続開始日から1年経過日までの相続)、が挙げられます。

上記の④相続税の申告期限について、被相続人の死亡日(相続開始を知った日)の翌日から10ヶ月以内に被相続人の住所地所轄の税務署に相続税申告をする必要があります。

次回も事業承継税制について触れていきます。