介護保険の利用額上限と負担軽減の制度

以前、介護保険制度に利用額上限があることについて少し触れたので、今回は介護保険の利用額上限と負担軽減の制度について少し詳しくまとめてみます。

以前、介護保険制度に国・地方自治体の財源も投入されていることを書きましたが、具体的には、50%が国・地方自治体の税金(国は25%、都道府県・市町村は各12.5%)、50%が被保険者の保険料という割合で運営されております。

介護保険制度の利用者は、介護サービス等を受ける期間が長期化する傾向があるため、全サービス提供完了までの総額でみると多額になる可能性があります。

そのため、介護保険制度は、居宅サービスの提供を受ける場合、区分支給限度額という利用額上限の制度が設けられています。

区分支給限度額とは、要介護・要支援の認定区分に応じて、提供されるサービスの費用に対する介護保険制度の月額保険給付額が定められていることを言います。

利用者は、原則として、サービス費用の1割負担ですが、区分支給限度額を超過した部分は全額自己負担となります。ですので、一般的に、利用者は区分支給限度額の範囲内で居宅サービスの提供を受けることとなります。

区分支給限度額は居宅サービスに設定されており、施設サービスには設定されていないので、施設サービスを受ける場合、気が付いたら高額になっていたということも考えられます。

特に介護サービス等を受ける必要性が高くても低所得者の方は、施設サービスの提供を拒む可能性があります。

そこで、所得水準に応じた負担という形で支援する高額介護サービス費という制度があります。

高額介護サービス費は、施設サービス(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設)や居宅サービス(短期入所生活介護施設、短期入所療養介護施設等)を受ける場合、自己負担額が所得水準に応じて定められた一定額を超えたならば、市町村から超過額の払戻しをうける制度のことです。

所得水準は、第1段階(市民税世帯非課税で老齢福祉年金受給のある世帯)、第2段階(市民税世帯非課税で合計所得金額と課税年金収入額の合計が80万円以下の世帯)、第3段階(市民税世帯非課税で第1段階・第2段階以外の世帯)、第4段階(世帯の誰かが市民税課税のある世帯)、第5段階(第1段階から第4段階以外で収入が現役並みに見込まれる世帯)の5段階に区分され、自己負担額の上限は段階的に設定されています。

しかし、高額介護サービス費も、入浴・排泄・身の回りの世話・付添いなどの介護に関するサービスは対象となりますが、基本的に、居宅費(家賃・光熱費)や食費等は対象になりません。

そこで、一定の低所得者の方に対する居宅費や食費の軽減措置として、特定入所者介護サービス費という制度があります。

特定入所者介護サービス費は、居宅費や食費の負担限度額が設定されており、自己負担額のうち負担限度額超過額が介護保険制度により自治体からサービス提供事業所に支払われることで、利用者の負担を軽減できる制度のことです。

所得は、第1段階(生活保護受給者または世帯全員が住民税非課税で老齢福祉年金受給者)、第2段階(世帯全員が住民税非課税で合計取得金額、課税年金収入額および非課税年金収入額の合計が年間で年間80万円以下の方)、第3段階(世帯全員が住民税非課税で第2段階の合計額が年間80万円超の方)、第4段階(世帯内に住民税課税者がいるが本人は住民税非課税者または本人が住民税課税者)の4段階に区分され、自己負担額の上限は段階的に設定されています。

また、①生活保護受給者、②世帯員全員が市民税非課税、配偶者も市民税非課税、本人及び配偶者の預貯金等の額が単身1,000万円以下・夫婦2,000万円以下のように、①・②いずれか要件を満たす場合、利用者負担額軽減制度といった、市町村から居宅費や食費の助成を受けられる制度もあります。

ただし、上記のような軽減措置があっても、利用者が介護保険料を滞納していたら、保険給付分が払戻されなかったり、自己負担額の枠が増加(例えば1割から3割)したりする場合があるので、注意が必要です。

利用額上限で財政に配慮しつつも、所得に応じて軽減措置の制度が設けられ、介護サービス等が必要なすべての方にできるだけサービス提供が行われるような対応が図られていますね!