前回、医師のタスク・シェアリング、タスク・シフティングについて少し触れたので、今回は医師のタスク・シェアリング、タスク・シフティングについて少し詳しくまとめてみます。
現在、大病院等で勤務医不足が懸念されています。
日本の医療はフリーアクセスで、医師には応召義務があるため、大病院等では外来患者の過剰診療が指摘されています。
ここで、フリーアクセスとは、患者が望めば、病院・診療所のどこでも自由に受診医療機関を選べる制度を言います。医療機関受診に関して、アクセスがこれほど自由な国は少なく、多くの国では厳重なアクセス制限をかけています。
また、医師の応召義務とは、医師法において医師が診療行為を求められたときは、正当な理由がない限りこれを拒んではならないとする法令上の義務のことをいいます。
過剰診療と言われる所以は、日本は、人口一人あたりの診療回数はOECD各国中で1~2位(OECD平均の2倍)、医師一人あたりの診療回数についてはOECD各国で2位といったところにあります。
患者共通の苦情は、「3時間待ちの3分診療」であり、長い受診予約リストは深刻な問題だとOECDは報告しています。
これを解消する方策の一つとして、医師のタスクシェアリング、タスクシフティングという考え方が出てきました。
ここでタスクシェアリングとは、ある業務を他者あるいは他職種と共同で行うこと、タスクシフティングとは、ある業務を他者あるいは他職種に移譲することを言います。
現在、厚生労働省等で、医療行為の一部を他職種へ移譲するタスクシフティングが議論されています。これは、WHOが医療人材不足を部分的に解決する手段として提唱したもので、看護師の業務拡大・チーム医療の推進等につながる考え方です。
厚生労働省は、これまでのチーム医療を発展させる形で推進する、としています。
また、地域包括ケアシステムが目指す「かかりつけ医」の活用による機能分担も、大病院等の勤務医への負担軽減につながるものと考えられます。
一方で、地域偏在による医師不足も問題視されています。
都市部の病院や地方の大病院・有名病院は症例数も多く、新たな技術を常に学ぶことができるなど自らのキャリア形成につながることから、医師が集中します。しかし、僻地の病院では、キャリア形成が遅れる可能性があることに加え、医師の絶対数不足から実質的に24時間365日で拘束されるケースがあり、せっかく赴任しても都市部にすぐ逆戻りする場合があるようです。
これを解消する方策としては、地方大学医学部の地域枠の採用、AI導入による診療やオンライン診察・遠隔手術技術(手術支援ロボット(ダヴィンチ)など)の活用などが挙げられます。
これまで医師に集中していた権限・役割が、これからは看護師や多職種に分散させたり、ICTによる支援を受ける方向に進むことが予想されます。
いずれにせよ今後は、医療の質を確保しながら、医療従事者全体でバランスよく業務分担していくことが必要になります。
医療従事者を含め、日本から激務という職種がなくなることを祈念してやみません!