医師の偏在問題と総合診療医

これまでかかりつけ医について何度も触れましたが、今回はこれに関連する医師の偏在問題と総合診療医について少し詳しくまとめてみます。

厚生労働省の医政局が実施する検討会等である医療従事者の需給に関する検討会のうち、その下部組織に当たる医師需給分科会で、医師養成課程の中での医師偏在対策が検討されました。

その中で、①大学医学部における地域枠の設定(地域偏在・診療科偏在対策)、②初期臨床研修における地域偏在対策、③新専門医制度における地域偏在・診療科偏在対策、④総合診療医の養成、を軸に医師偏在対策を行っていくことが議論されました。

医師のタスク・シェアリングのところでも書きましたが、地域偏在による医師不足が問題視されています。

そもそも地域偏在による医師不足は、2004年度から導入された新臨床研修制度がきっかけと言われています。この新制度により研修医が任意の研修先を選ぶことが可能になり、症例数が多く勤務条件のよい都市部の民間病院に研修医が流れるようになりました。その結果、地方の大学病院は研修医を確保できず、周辺病院に派遣していた医師を引き揚げたことで、地域で働く医師数が不足したのです。つまり、医師の絶対数が足りないのではなく、医師が都市部等に偏在することによって地方の医師不足が引き起こされたとみられています。

また、診療科別の医師数にも大きな偏りがあり、現状、小児科や産科は不足傾向で、麻酔科や救急科でも医師が不足しています。これらの診療科で言えることは、24時間対応の場合があることが挙げられます。これに加え、厚生労働省の推計値によると、2024年には内科、外科、整形外科が不足するとされています。

医師の偏在問題を解決しなければ、地域医療構想・地域包括ケアシステムの実現や医師の働き方改革の進捗にも影響を及ぼします。

そこで大学レベルおよび研修医レベルで地域偏在や診療科偏在を解消していこうという取組に加え、総合診療医や総合診療専門医の養成による取組みも検討されることとなりました。

総合診療医が各分野の専門医につなぐ役割を担うことで効果的かつ効率的な医療提供体制が構築されるとともに、専門医の必要数減少により医師偏在問題の解消につながることが期待されています。

総合診療医はかかりつけ医に求められる素養にもつながりますので、その養成は、結局は地域包括ケアシステムの実現にもつながる考え方だと思います。

ただし、専門分化が進んだ現代の医療では、総合診療医の負担が大きくなることも予想されます。

地域別・診療科別の医師偏在問題は、結局、条件面の違いにより、有利な方へ偏る傾向が顕著になったものと考えられます。

偏在による医師不足は、医師の働き方改革、総合診療医の増加やICT・ロボット利用でもある程度解決すると思いますが、不利な条件に対する何らかの優遇策も検討する必要があります。

これに対し、大学医学部の地域枠における奨学金制度が実施されたり、地域で一定期間勤務した医師の認定制度(認定医師であることを広告可能)等の対策が検討されているようです。

どのような職業でも条件のよい職種に人は集まるので、医師だけ偏在による不足を責めるのは酷だと思います。

今後、不利な条件に対する優遇策が検討され、医師の偏在問題が解消されること切に願います!