医療保険制度と介護保険制度

これまで地域包括ケアシステムに触れ、医療に絞って書いてきましたが、月も改まったので、今回からは介護・福祉について書いていこうと思います。
今回は、介護保険制度と医療保険制度の関係や違いについて少し詳しくまとめてみます。
介護保険制度とは、介護を必要とする被保険者に、介護に関する必要なサービスを受けることのできる社会保険制度のことを言います。
40
歳から介護保険制度のサービスを受けることができるので、40歳から介護保険制度への加入が義務付けられ、保険料を支払うことになります。
会社員の場合、40歳から64歳までの被保険者は、加入している健康保険と一緒に徴収され、社会保険診療報酬支払基金を経由して市町村に納付されます。自営業の場合、市町村へ国民健康保険と一体で介護保険を納付することができます。
65
歳以上の被保険者は、原則として年金からの天引で市区町村が徴収します。
介護保険制度のサービスは、市町村から要介護または要支援の認定を受けた方のみ受けることができます。
介護保険の被保険者は、第1号被保険者と第2号被保険者に分けられます。
1号被保険者は、保険者となる市町村に住所地がある65歳以上の方を言います。第1号被保険者は、市町村から要介護または要支援の認定を受けたなら介護保険制度のサービスを受けることができます。
また、第2号被保険者は、保険者となる市町村に住所地がある4064歳の方で医療保険制度の加入者とその被扶養者を言います。第2号被保険者は、加齢に伴う変化が原因である一定の疾患(特定疾患)により要介護または要支援の状態になった方のみ、介護保険制度のサービスを受けることができます(もちろん市町村から要介護または要支援の認定は必要です)。
参考までに、特定疾患とは、末期がん、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、骨折を伴う骨粗鬆症、初老期における認知症、パーキンソン病、脊柱管狭窄症、早老症、糖尿病性の神経障害・腎症・網膜症、脳血管疾患、閉塞性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などを言います。
要介護や要支援の認定を受けた介護保険の被保険者が介護保険制度のサービスを利用した場合、原則として、利用者は利用料の10%のみを負担します。
一方、医療保険制度とは、医療機関を受診した被保険者に、医療費の一部または全部を保険者が給付する社会保険制度のことを言います。
以前にも書きましたが、医療保険制度は、会社員等が加入する健康保険、自営業者等が加入する国民健康保険、原則として75歳以上の高齢者が加入する後期高齢者医療制度があります。
わが国では、すべての国民はいずれかの医療保険に加入することになっておりますので、国民皆保険制度と言われます。
介護保険制度は、要介護または要支援に認定された方のみがサービスを受けられる制度で対象者が限定されている一方で、サービスを受ける期間が長期化する傾向があります。
他方、医療保険制度は、負傷や疾病の治療が主ですが、誰でも望めばサービスを受けられる一方で、サービスを受ける期間が比較的短期である傾向があります。
そのため、介護保険制度は利用者の1カ月の利用額上限がある一方で、医療保険制度は上限がありません。
どちらの制度も被保険者の納付額だけでは財源が不足し、国・地方自治体の財源も投入されています。
地域包括ケアシステムにおいて、家族や地域住民の助け合いなどにより高齢者の介護・福祉を補完しようという発想は、国・地方自治体の財源不足傾向を考えると止むを得ない流れかもしれません。