小規模宅地等の特例(その1)

前回までは、相続財産の評価についてまとめてきましたが、今回からは小規模宅地等の特例について書いていきます。

小規模宅地等の特例は、厳密には「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例」と言い、相続税がかなりの節税できる制度です。

相続税の計算上、小規模宅地等の特例は、以前書きました相続税の課税価格の計算に対する特例であり、納付税額の計算における控除の制度とは異なるので、注意が必要です。

小規模宅地等の特例とは、個人が相続・遺贈で取得した財産のうち、相続開始直前に被相続人または被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族が事業用・居住用としていた一定の宅地等がある場合、相続税の課税価格に算入する宅地等の価額の計算上、一定面積(限度面積)まで一定割合(減額割合)を宅地等の評価額から減額する制度のことを言います。

ここで、宅地等とは、土地のみならず土地の上に存する権利も含みます。また、一定の宅地等とは、建物または構築物の敷地の用に供されている宅地等(農地および採草放牧地は除く)をいい、棚卸資産およびこれに準ずる資産を除きます。

なお、①相続時精算課税に係る贈与によって取得した宅地等、②個人の事業用資産についての贈与税・相続税の納税猶予および免除の適用を受けた特例事業受贈者に係る贈与者・特例事業相続人等に係る被相続人から相続または遺贈により取得した特定事業用宅地等、の場合は小規模宅地等の特例の適用を受けることはできません。

小規模宅地等の特例は、①特定事業用宅地等、②特定同族会社事業用宅地等、③貸付事業用宅地等、④特定居住用宅地等の4つに分類でき、この分類ごとに限度面積と減額割合が定められています。

被相続人等の事業用としていた宅地等は①特定事業用宅地等・②特定同族会社事業用宅地等・③貸付事業用宅地等で、被相続人等の居住用としていた宅地等は④特定居住用宅地等になります。

被相続人等の事業用としていた宅地等のうち、貸付事業以外の事業用の宅地等は①特定事業用宅地等、貸付事業用の宅地等は②特定同族会社事業用宅地等・③貸付事業用宅地等となります。②特定同族会社事業用宅地等は、(a)一定の法人(特定同族会社)に貸し付けられた法人の事業(貸付事業を除く)用の宅地等の場合が該当します。③貸付事業用宅地等は、(b) 一定の法人(特定同族会社以外)に貸し付けられた法人の事業(貸付事業を除く)用の宅地等、(c) 一定の法人に貸し付けられた法人の貸付事業用の宅地等、(d) 被相続人等の貸付事業用の宅地等の場合が該当します。

次回は、①特定事業用宅地等、②特定同族会社事業用宅地等、③貸付事業用宅地等、④特定居住用宅地等の分類ごとの要件等について触れていきます。