前回までは相続人の範囲・喪失についてまとめてみましたが、今回は相続人の法定相続分について書きます。また、前回、相続放棄について少し触れましたので、相続の承認と放棄についても触れます。
相続人の法定相続分ですが、相続の順位によって、その割合が異なります。
まず、第1順位・子に相続の場合、配偶者に2分の1、子(代襲相続人含む(再代襲あり))に2分の1の割合、第2順位・親に相続の場合、配偶者に3分の2、親(直系尊属)に3分の1の割合、第3順位・兄弟姉妹に相続の場合、配偶者に4分の3、兄弟姉妹(代襲相続人含む(再代襲なし))に4分の1の割合となります。
子、親(直系尊属)または兄弟姉妹が数人いるときは、各自の相続分は同じ割合になります。ただし、第3順位・兄弟姉妹に関して、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1しかないので、注意が必要です。
ここまで法定相続分について書いてきましたが、被相続人の遺言があった場合、遺言での相続の方が法定相続に優先します。被相続人の遺言がない等の状況になって,民法の法定相続の規定が適用されます。
次に、相続人は、相続をするかどうかの意思表示をすることができます。
これが、単純承認・限定承認・放棄といわれる制度です。
相続分を放棄するなんて考えられないと思われる方もいらっしゃると思います。
しかし、相続は原則として財産も債務も包括的に承継しますので、財産より債務の方が大きく上回る場合やまれに相続人の財産を引継ぐのを潔しとしないという方の場合は、相続の放棄をすることなります。
放棄は前回書きましたので、これ以上の説明は割愛するとして、単純承認と限定承認について、以下で述べます。
まず、単純承認ですが、相続人は被相続人の権利義務(財産・債務)のすべてを(無限に)承継する(民法920条)、こととなっております。
単純承認は相続人の意思表示によってもなされますが、①相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき、②3ヶ月以内に限定承認または放棄をしなかったとき、③限定承認または放棄をした後に、相続財産の隠匿や消費、悪意での財産目録不記載があったときは、相続人が単純承認をしたものとみなされます。
逆に言うと、限定承認や放棄したい場合でも、誤って相続財産を処分したり、3ヶ月以内に手続をしていなかったりすると、自動的に単純承認になるので注意が必要です。
限定承認は、相続人は相続で得た財産の範囲内でのみ債務を承継することを承認することです。
限定承認する場合、共同相続人全員で家庭裁判所に限定承認の申述をしなければなりません。限定承認に同意しない人が一人でもいると認められないため注意が必要です。
ただし、相続人の一部が相続放棄した場合は、放棄した相続人を除いた共同相続人全員で限定承認ができます。
被相続人の死亡時の財産状況は様々なので相続の承認・放棄の制度が認められていますが、限定承認や放棄をする場合は期限が短いため、被相続人の死亡後、速やかに行動に移す必要があります。
遺族はいつまでも悲しんでいられないというのが現実です。