相続人の相続権喪失

前回は相続人の範囲についてまとめてみましたが、今回は相続人の相続権喪失について書きます。

相続人の相続権喪失の制度について、民法では、欠格・廃除という制度があります。

まず、欠格ですが、相続人が民法の相続欠格事由に該当する場合に相続権が当然に喪失する制度のことです。

相続欠格事由には、①故意に被相続人または相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、または至らせようとしたために、刑に処せられた者、②被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、または告訴しなかった者(ただし、その者に是非の弁別がないとき、または殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない)、③詐欺または強迫によって、被相続人が相続に関する遺言・撤回・取消・変更することを妨げた者、④詐欺または強迫によって、被相続人に相続に関する遺言・撤回・取消・変更させた者、⑤相続に関する被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者、と列挙されています。

要するに、相続人に法律に反するような不正行為等があった場合に相続権を喪失するということです。

次に、廃除ですが、民法では、①遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者)が、被相続人に虐待もしくは重大な侮辱を加えたとき、または推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる(892条)、②被相続人が遺言で推定相続人へ廃除の意思表示したときは、遺言執行者はその遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる(893条)、と規定されています。

要するに、相続人の非行等があった場合に、被相続人の意思で相続権を喪失させるということです。

欠格・廃除になった場合、該当の被相続人には相続権はありませんが、代襲相続はできます。

また、相続人の相続権喪失の事由として、放棄もあります。

民法では、相続の放棄は家庭裁判所に申述しなければならず(938条)、相続放棄をした場合、初めから相続人とならなかったものとみなす(939条)、と規定されています。

要するに、相続人の意思で相続権を喪失する場合です。

放棄等に関して、相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、相続について単純もしくは限定の承認または放棄をしなければならない(915条)、とされています。

放棄の場合、該当の被相続人に当初から相続権はないこととなり、代襲相続もできません。

現実にはあまり聞かない話だと思いますが、倫理に反する行為を行っても相続できるという事態を防止するため、欠格・廃除は制度として必要です。