相続税の計算方法(その1)

前回まで民法(第五編)の相続の規定を中心にまとめてきましたが、今回から税法である相続税を中心に書いていきます。

そのなかでも今回は、相続税の計算方法について書きます。

これまで相続人に遺言や協議により遺産分割されることを書きました。

相続税の計算も遺産分割されたことを前提に計算されます。

具体的には、相続、遺贈、相続時精算課税の贈与等により取得した財産に対して、相続税が課税されます。

相続税の計算方法としては、(1)各人の課税価格の計算(相続人各人の財産価格の集計)、(2)相続税の総額の計算(左記(1)を合計して基礎控除の控除後に相続税総額の計算)、(3)各人ごとの相続税額の計算(左記(2)の相続税総額を相続人各人に按分)、(4)各人の納付税額の計算(左記(3)の金額に2割加算や控除等を加減算して納付額を算定)という4つのステップを踏みます。

今回は、相続税の計算方法(1)について、詳しく書きます。

相続税法等において、相続人各人の財産価格は、①相続または遺贈により取得した財産の価額(プラス財産)、②みなし相続等により取得した財産の価額(プラス財産)、③非課税財産の価額(マイナス財産)、④相続時精算課税に係る贈与財産の価額(プラス財産)、⑤債務および葬式費用の額(マイナス財産)、⑥相続開始前3年以内の贈与財産の価額(プラス財産)、があります。

これらのプラス財産とマイナス財産を加減算して、相続人各人ごとに財産価額を算定します。

上記のうち、②みなし相続等により取得した財産の価額、③非課税財産の価額、④相続時精算課税に係る贈与財産の価額、⑤債務および葬式費用の額、⑥相続開始前3年以内の贈与財産の価額等が相続税法特有の財産価格と言えます。

まず、②みなし相続等により取得した財産の価額は、以前書きました生命保険金や退職金・定期金等を言います。

次に、④相続時精算課税に係る贈与財産の価額ですが、原則として被相続人が生前に相続時精算課税に係る贈与を選択し、一定年齢以上の子または孫に財産を贈与した時の贈与財産の価額を言います。

同様に、相続開始前3年以内の贈与財産ですが、相続開始前3年以内に被相続人が暦年贈与した場合の贈与財産の贈与時の価額を言います。これには贈与税の暦年課税に係る基礎控除額(110万円)以下の贈与財産であっても財産価額の計算に含められるので注意が必要です。

また、③非課税財産の価額は、墓地・墓石・仏壇・仏具や死亡保険金・死亡退職金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)等をいいます。ただし、被相続人が生前購入した墓地・仏具等には原則として財産価額の計算から除かれますが、骨董的価値のあるもの等として投資の対象と考えられるものは財産価額の計算に含められることがあります。

同様に、⑤債務および葬式費用の額も、財産価額の計算から除かれます。 相続税の計算方法(1)の説明はここまでで、相続税の計算方法(2)~(4)については、次回以降に譲るとします。