相続財産の評価(その11)

前回まで相続財産の評価で取引相場のない株式の(3)株式評価方式と会社規模による株価算定についてまとめましたが、今回は取引相場のない株式の(4)特定評価会社の判定について書いていきます。

取引相場のない株式を評価するに際し、(4)特定評価会社の判定により一定の要件を満たした株式は、(1)~(3)で評価する株式とは別の方法で評価します。

(4)特定評価会社の判定により、①比準要素数1の会社、②株式等保有特定会社、③土地保有特定会社、④開業後3年未満の会社、⑤開業前又は休業中の会社の株式、⑥清算中の会社、に判定された会社は以下の方法で評価されます。

まず、①比準要素数1の会社とは、類似業種比準方式における一株当たりの配当金額、利益金額及び純資産価額の3要素のうちいずれか2要素がゼロで、かつ、直前々期末を基準にして3要素を計算した結果も2要素以上がゼロの会社を言います。この場合の配当金額および利益金額の計算は、直前期末以前3年間の実績を反映して判定することになるので注意が必要です。この場合の株式評価は、原則として純資産価額方式で計算しますが、類似業種比準価額×25%+1株当たりの純資産価額×75%で計算することも可能です。ただし、3要素すべてゼロの比準要素数0の会社は、純資産価額方式で計算します。

次に、②株式等保有特定会社は、財産評価基本通達に基づいて算定した株式・出資等の価額の総資産価額に対する割合が50%以上の会社を言います。この場合の株式評価は、原則として純資産価額方式で計算しますが、S1(類似業種比準価額の算式に受取配当金収受割合等を考慮して計算した金額)とS2(株式等の相続税評価額から税引後評価差額相当額を控除した金額を発行済株式数で除した金額)の合計額で計算することも可能です。

さらに、③土地保有特定会社は、財産評価基本通達に基づいて算定した土地等の価額の総資産価額に対する割合が一定割合以上の会社を言います。この一定割合は、大会社は70%、中会社は90%、小会社で(a)総資産価額が大会社区分の会社は大会社の割合、(b)総資産価額が中会社区分の会社は中会社の割合、(c)それ以外は対象外とされています。この場合の株式評価は、純資産価額方式で計算します。また、④開業後3年未満の会社も純資産価額方式で計算します。

なお、上記の純資産価額方式に関して、議決権割合50%以下の同族株主グループに属する株主は純資産価額に80%を乗じた金額で評価できます。

最後に、⑤開業前又は休業中の会社の株式は純資産価額方式、⑥清算中の会社の株式は清算分配見込額の複利現価でそれぞれ計算します。

今回で取引相場のない株式の評価の説明は終了ですが、次回以降も相続財産の評価について触れていきます。