前回まで相続財産の評価で取引相場のない株式についてまとめましたが、今回からは不動産について書いていきます。
不動産の中でも、今回は家屋(建物)の評価について触れていきます。
まず、家屋の評価単位は、原則として、1棟の家屋ごとに評価します。
家屋の評価は、家屋の固定資産税評価額に1.0を乗じて計算します。遠回しに言いましたが、家屋の評価額は固定資産税評価額となります。ただし、相続時に建築中の家屋の価額は、費用現価の100分の70で評価します。
また、家屋の付属設備ですが、家屋と構造上一体となっている設備(例えば、電気設備、ガス設備、衛生設備、給排水設備等)は、家屋の価額に含めて評価します。
一方、家屋と構造上一体となっていない設備のうち、門、塀等は再建築価額から相続時までの定率表による償却累計額(または減価額)を控除した金額に、庭園設備(庭木、庭石等)は調達価額に、それぞれ70%を乗じた金額で評価します。
参考までに、文化財建造物である家屋の評価も別途定めがあり、固定資産税評価額が付されている場合は固定資産税評価額で、固定資産税評価額が付されていない場合は再建築価額から経過年数に応ずる減価額を控除した価額に70%を乗じた金額で、それぞれ評価します。
次に、被相続人が貸していた貸家ですが、固定資産税評価額に(1-借家権割合(30%)-賃貸割合)を乗じた金額で評価します。ここで賃貸割合とは、貸家に係る各独立部分(構造上区分された数個の部分の各部分)がある場合、各独立部分の賃貸の状況に基づいて、相続時に賃貸されている各独立部分の床面積合計を家屋の独立部分の床面積合計で除した割合となります。
この点、相続時にたまたま空室であった場合が問題となります。このような一時的な空室は、①各独立部分が相続前に継続的に賃貸されてきたか、②賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われたか、③空室期間に他の用途の供されていないか、④空室期間が相続前後の例えば1カ月程度である等一時的な期間であったか、⑤相続後の賃貸が一時的なものではないか、などの事実関係から総合的に判断し、相続時に賃貸されている各独立部分の床面積合計(賃貸割合の分子)に含めて賃貸割合を計算できます。
最後に、被相続人が借りていた借家権ですが、借家権が権利金等の名称で取引慣行のある地域における借家権の価額は、家屋の評価額に借地権割合(30%)と賃借割合を乗じた金額で評価されます。ただし、取引慣行のない地域の場合は、評価しません。ここで、賃借割合は、賃借している独立部分の床面積合計を家屋の各独立部分の床面積合計で除した割合になります。
次回以降も相続財産の評価について触れていきます。