これまで都道府県による規制について少し触れたことがありましたが、今回は行政当局による指導・調査・監査について少し詳しくまとめてみます。
厚生労働省関連の行政当局による医療機関への指導・調査・監査は、指導(集団指導・集団的個別指導・個別指導)、適時調査、立入監査、立入検査(医療監視)に大別できます。
そのうち、医療機関に行政当局担当者が赴いて行われるものは、個別指導、適時調査、立入監査、立入検査(医療監視)になります。
また、上記の指導・調査・監査のうち、立入検査(医療監視)は保健所により、それ以外は保険請求関連として原則として都道府県と地方厚生(支)局の担当者により行われます。
以下で指導・調査・監査のそれぞれについて、詳しく見ていきましょう。
指導のうち集団指導とは、多人数による講習会形式で実施され、新規の保険医療機関等が受ける講習等のことを言います。
指導のうち集団個別指導とは、レセプト1件当たりの平均点数が各都道府県の平均点数と比較して病院で1.1倍、診療所で1.2倍を超えており、かつ、過去2年間に指導を受けた医療機関を除いた上位8%の医療機関が対象となり、複数名で講習を受けるものを言います。しかし、集団個別指導の実施状況は、地域によってばらつきがあります。
指導のうち個別指導とは、医療機関が個別に指名され、都道府県と地方厚生(支)局が診療報酬明細書(レセプト)に基づき、個別面接方式で実施されるものを言います。
個別指導の結果として、過去の診療報酬の自主返還を求められることがあるので、毎月の保険請求時のチェックが重要になります。
個別指導には、都道府県と地方厚生(支)局により、新規開業1年を経た医療機関を対象とする新規個別指導、支払基金や保険者等からの情報による個別指導に加え、厚生労働省と都道府県と地方厚生(支)局の3者により実施される共同指導、臨床研修病院・特定機能病院等に対して行われる特定共同指導があります。
新規個別指導・特定共同指導以外の個別指導は、集団的個別指導の結果が芳しくなかったり、内部通報等により対象先が選定されることが多いようです。
適時調査とは、診療報酬点数表の基本診療料・特掲診療料の施設基準届出項目に関する適正性について実施される実地調査のことを言います。個別指導のようなレセプトとの照合が行われるというよりは、施設基準の充足状況について調査が行われます。
都道府県と地方厚生(支)局等によるもので、一番厳しい対応である立入監査は、診療内容および診療報酬請求に不正または著しい不当の疑いがある場合に実施される監査のことを言います。高い確度で不正が疑われる医療機関に実施されることが一般的で、複数回に及ぶ立入が行われ、監査後、保険医療機関及び保険医に行政措置(取消・戒告・注意)が下される可能性が高いです。
一方、保健所により行われる立入検査(医療監視)は、診療報酬請求の内容についてではなく、どちらかというと医療法の基準(設備の実態や診療録の取扱等)への準拠性を中心に定期的に実施される検査のことを言います。
厚生労働省関連以外の行政機関の調査としては、税務署の税務調査がありますが、こちらは会計処理やそれに基づく納税額の適切性についての調査になります。税務調査では、収益計上の適切性等を検証するためにカルテやレセプトが調査対象となることがありますが、診療報酬の請求内容というよりは会計処理や納税額の適切性という視点で見られます。具体的には、本来収益に計上すべき金額の漏れが根拠資料との不整合から発見され、追加で納税が発生するというようなケースが考えられます。
診療報酬の請求やそれに基づく収益の計上は、過不足なく適切に計上され、行政機関からの指摘を受けないチェック体制(内部統制)を構築する必要があります。
そのためには、日々の精算時や月次の保険請求時に十分にチェックしておく必要があります。
指導や調査で修正を求められることがないようなチェック体制を構築し、余分な支払が発生しないような運営がなされることを祈念します!