診療報酬請求および審査・支払機関と保険者の関係

前回、診療報酬請求について少し触れましたので、今回は診療報酬請求および審査・支払機関と保険者の関係についてもう少し詳しくまとめてみます。

診療報酬請求とは、医療機関が患者 (被保険者)に行った医療行為等について、決められた点数 (1点=10円)をレセプトに記載して審査・支払機関へ、審査・支払機関は保険者に請求し、保険者は審査・支払機関を通じ、医療機関に患者自己負担分差引後の金額を支払うことを言います。

ここでいう審査・支払機関は社会保険診療報酬支払基金と国民健康保険団体連合会の2つを言います。

社会保険診療報酬支払基金は、サラリーマン等が加入する協会けんぽや健康保険組合等の健康保険を請求する場合に、国民健康保険団体連合会は、自営業者等が加入する国民健康保険を請求する場合に、それぞれ取り扱います。

審査・支払機関は、医療機関から請求されたレセプトを審査し、問題がなければ健康保険組合等の保険者に請求します。

保険者も再度、審査し、問題がなければ患者自己負担分差引後の金額を審査・支払機関を通じて医療機関に支払うことになります。

審査・支払機関の審査の結果、問題がある場合は、返戻と査定増減という形で医療機関に通知され、その分が反映された金額で診療報酬が支払われます。

返戻(過誤返戻)は、保険種別の誤りなどの記載不備や疑義がある等で審査決定ができないレセプトが医療機関にそのまま返戻され、その全額の支払いがなされません。一方、査定増減(過誤増減)は、請求された診療内容が適切な診療報酬額となるように、点数が減点または増点され、その増減点が増減された金額で支払われます。

次に、保険者でも審査し、問題がある場合は、審査・支払機関に再審査を請求し、その分が支払額に反映されることとなります。

医療機関では、返戻されたレセプトは誤りを修正して審査・支払機関に再請求します。また、査定増減されたレセプトについては、審査内容に異議がある場合のみ審査・支払機関に再審査請求します。再請求や再審査請求されたレセプトは他のレセプト同様の流れで審査され、それが認められれば支払いがなされることとなります。

レセプトの提出は、診療した月の翌月の10日までに行うこととされています。

ところで、自費診療(保険外診療)という話を聞いたことがあると思いますが、当然ながら保険請求はできず、全額患者負担になります。

評価療養(先進医療等)や選定療養(大病院の初診料(定額負担)、差額ベッド代や歯科金合金等など)の例外を除き、医療機関では、保険診療と保険外診療の併用は原則禁止(混合診療の禁止)となっております。仮に混合診療を行った場合は、保険診療に該当する部分を含めすべて自由診療(保険外診療)という厳しい取扱いとなり、全額患者負担となります。

以上のようにレセプトはルールに準拠した正確な記載がなされないと、病院が損する形になります。また、診療は保険診療と自由診療を明確に分けないと患者が損する形になります。

とはいえ、大病院等では、1日に数百~数千のレセプトが作成されるので、そのチェックだけでも膨大な量になります。

返戻や査定増減はゼロであることが理想ですが、大病院等で一定割合は出るのは止むを得ず、返戻や査定増減が極力出ないようなチェック体制を強化するほか対処がありません。

医事課の方の苦労に、頭が下がる思いです。