2020年診療報酬改定(1)~基本方針~

これまで地域包括ケアシステム・かかりつけ医や医師の働き方改革などについて触れてきましたが、今回はそれらの論点の総まとめ的な話として2020年診療報酬改定について少し詳しくまとめてみます。

そもそも診療報酬とは、医療機関が患者に行った医療や医薬品の処方に対して支払われる医療費のうち、保険者(患者加入の医療保険)から支払われる料金のことを言います。

年齢や所得によって異なるケースもありますが、基本的に医療費は、患者本人が3割、保険者が7割の費用を負担します。

この医療の診療報酬は2年に1度のペースで改定されます(ちなみに介護の診療報酬は3年に1度改定)。

具体的な診療報酬改定は、改正年の2月頃に厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)から厚生労働大臣に答申され、3月に告示・通知等が発令されます。

改正年の4月より新しい診療報酬点数にて診療がスタートする流れになっています。

2020年は診療報酬改定の年で、現在、中医協から厚生労働大臣に答申されています。

ただ、2020年の診療報酬改定に関する基本方針は、2019年12月に厚生労働省の社会保障審議会から公表されていますので、今回は、こちらに触れます。

まず、2020年は診療報酬改定の基本認識として、以下が挙げられています。

①健康寿命の延伸、人生100 年時代に向けた「全世代型社会保障」の実現

⇒2025年問題・2040年問題・健康寿命の延伸・医療費増大への対処

②患者・国民に身近な医療の実現

⇒地域包括ケアシステム構築・かかりつけ医機能充実等

③どこに住んでいても適切な医療を安心して受けられる社会の実現、医師等の働き方改革の推進

⇒地域医療構想実現への取組、 実効性のある医師偏在対策、医師等の働き方改革推進

④社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和

⇒医療資源の効率的な配分、医療分野のイノベーション評価等の実施

これを踏まえ、改定の具体的方向性が以下のように示されています。

(1)医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進 【重点課題】

◇医師等の長時間労働などの改善取組評価、医療機関内の労務管理・労働環境改善のためのマネジメントシステム実践取組推進、タスク・シェアリング/タスク・シフティング・チーム医療推進、届出・報告の簡素化、人員配置の合理化を推進

◇地域医療確保の観点から救急医療体制等の評価

◇業務効率化へのICT 利活用推進 、ICT 医療連携取組推進。

(2)患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現

◇かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師・薬局の各機能評価

◇患者にとって必要な情報提供、相談支援等の評価、生活習慣病の重症化予防の取組、治療と仕事の両立取組等推進、明細書無料発行推進

◇リハビリテーション・がん医療・認知症医療・精神医療・難病患者医療の評価、小児医療・周産期医療・救急医療の充実、先進的医療技術の評価

◇口腔疾患の重症化予防や口腔機能の維持・向上のためかかりつけ歯科医機能評価、歯科診療所と病院歯科の機能分化・連携を強化

◇かかりつけ薬剤師・薬局の評価、院内薬剤師業務の評価

(3)医療機能の分化・強化、連携と地域包括ケアシステムの推進

◇医療機能の分化・強化、連携推進

◇外来医療の機能分化・大病院受診時定額負担制度の見直しを含め、大病院と中小病院・診療所の機能分化を推進。

◇訪問診療、訪問看護、歯科訪問診療、訪問薬剤管理等の提供体制確保

◇地域包括ケアシステムの推進のための多職種連携・協働の取組等の推進

(4)効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上

◇後発医薬品やバイオ後続品の使用促進(2020 年9月までに後発品医薬品の使用割合を80%目標実現)の推進

◇革新性が高く市場規模が大きい、または、著しく単価が高い医薬品・医療機器は費用対効果評価制度活用による適正価格設定

◇医薬品、医療機器、検査等の市場実勢価格を踏まえた評価、医療技術等の評価

◇医師・院内薬剤師と薬局薬剤師の協働の取組による医薬品の適正使用推進

これらの基本方針に基づいて、2020年2月まで中医協で答申案を審議していきました。

審議は、これまでの地域包括ケアシステム構築の議論に加え、医師等の働き方改革が重点課題として取り上げられるようになりました。

これらに対応した医療機関は、その取組を評価され、診療報酬上の恩恵を受ける仕組みとなっています。

中医協の答申案は、より具体的なアプローチと診療報酬点数が提示されており、国の姿勢が垣間見れますが、その話題は次回に譲ることとします。