前回は2020年診療報酬改定に関する2019年12月公表の基本方針について触れましたが、今回は2020年2月の中医協答申について少し詳しくまとめてみます。
前回書きましたが、診療報酬改定は、改定年の2月中旬頃に厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)から厚生労働大臣に答申され、3月に告示等の発令の後、4月に新診療報酬点数に移行します。
2020年診療報酬改定は、2月7日の中医協総会で改定案が了承され、厚生労働大臣に答申されました。3月には告示されると思われます。
この2020年診療報酬改定の答申案をまとめると以下になります。
まず、2020年度の改定率は、本体部分(技術料)+0.55%、薬価-0.99%・医療材料価格-0.02%の結果、医科+0.53%、歯科+0.59%、調剤+0.16%となりました。
今回の改定の目玉(重点課題)として、医師の働き方改革への取組が評価されるようになります。2024年4月からの医師の時間外労働上限規制を見据え、診療報酬の面で労働時間短縮を後押しします。
地域医療体制確保加算を新設し、救急車や救急ヘリコプターによる搬送件数が年2000件以上、勤務医の負担軽減・処遇改善体制を整備する医療機関等が算定できます。
また、救急搬送看護体制加算を加算1・加算2の2段階とします。新設の加算1は、救急車や救急ヘリコプターによる搬送件数が年1000件以上、専任の看護師を複数名配置等といった要件を満たすと算定できます。
これ以外に、医師の働き方改革の支援として以下の対応が図られています。
・総合入院体制加算は、算定要件である多職種による役割分担推進会議(タスクシフト・シェア)に院長が年1回出席必要
・医師事務作業補助体制加算は、算定できる病棟を拡大(地域包括ケア病棟、結核病棟、有床診療所、精神科急性期治療・療養病棟、認知症治療病棟など)し、報酬引上げ
・看護職員夜間配置加算や急性期看護補助体制加算などは、コメディカルの手厚い配置で報酬引上げ
・麻酔管理料IIは、麻酔の維持や導入時のライン確保等は、特定行為研修を修了した常勤看護師による場合も算定可能
一般病棟の入院料に関する重症度・看護必要度も見直されます。
急性期一般入院料1の看護必要度Iを30%以上から31%以上、IIを25%以上から29%以上に引上げます。一方、入院料4ではIを27%以上から22%以上、IIを22%以上から20%以上としました。これは、入院料1~4間の格差を広げ、過剰とされる入院料1(看護配置7対1以上)から入院料2(看護配置10対1)以下への移行を進める意向です。
増加傾向の地域包括ケア病棟・病床も、一定の制限がかけられます。まず、400床以上の大病院による地域包括ケア病棟入院料の新規届出を不可とします。また、一般病棟から地域包括ケア病棟への転棟が6割以上である400床以上の病院は入院料が10%減額されます。さらに、200床未満の病院を対象とした地域包括ケア病棟入院料の実績要件も厳格化します。
かかりつけ医機能も強化されます。
地域包括診療加算の要件を緩和し、時間外対応に関して患者からの電話等による問合せに複数の診療所が連携して対応するケースも届出可とします。機能強化加算は、患者への周知不足が問題として、従来の院内掲示に加え、患者への書面の準備が必要になります。
大病院と中小病院・診療所の機能分化のため、紹介状なしで受診した患者の定額負担徴収の範囲を、許可病床400床以上から一般病床200床以上の地域医療支援病院に広げました。
栄養管理に関する評価も手厚くなります。
早期栄養介入管理加算を新設し、集中治療室での栄養管理を評価しました。回復期リハビリ病棟入院料1における管理栄養士の専任配置義務化、外来栄養食事指導料や在宅患者訪問栄養食事指導料の管理栄養士による栄養指導も評価されます。
その他、回復期リハビリテーション病棟入院料は、リハビリの実績指数の基準値を引上げ、リハビリの効果をより求める方針となります。療養病棟入院基本料は、経過措置2(看護配置25対1未満)は廃止し、経過措置1(看護配置20対1未満、医療区分2・3 の患者割合50 %未満)は2年間の経過措置延長とします。
主要な改定は以上で、これ以外は、次回以降、必要に応じて触れていきたいと思います。
医師の働き方改革や地域包括ケアシステムを支える仕組み(かかりつけ医機能等)を推進する一方で、点数の高い入院料の要件厳格化で、限られた財源の適正配分に配慮した内容になっております。
今回の改定により人・物・金・時間等の医療資源の有効活用がより前進することを祈念します!