訪問診療と往診の違いとは?

これまで地域包括ケアシステム等について少し触れたので、今回はそれに関連する訪問診療について少し詳しくまとめてみます。

訪問診療と往診は意味が違うのはご存じでしょうか?

訪問診療とは、計画的に医師が訪問して診療を行うことです。

毎週何曜日の何時と約束して医師が定期的かつ計画的に訪問し、診療、治療、薬の処方、療養上の相談、指導等を行っていきます。

また、患者・家族や関係医療機関などから情報収集を図り、その上で、治療の希望や家族の介護力や経済的な事情なども考慮して、診療計画、訪問スケジュールをたてていきます。

訪問診療の目的は主に持病の治療ですが、栄養状態の管理や悪化による褥瘡予防、肺炎等の二次的な合併症や廃用症候群の予防などが含まれます。

また、急変時の緊急訪問や入院手配など24時間体制で在宅療養をサポートしたり、訪問看護・訪問リハビリテーションとの情報共有、急変時の入院対応可能な近隣医療機関との連携などが必要とされる点も特徴の一つです。

一方、往診とは、通院できない患者の要請を受けて、医師がその都度、診療を行う事です。

突発的な病状の変化に対して、救急車を呼ぶほどでもない場合など、普段からお世話になっているホームドクターにお願いして診察に来てもらうもので、基本的には困ったときの臨時の手段です。

診療報酬に関しては、訪問診療(在宅患者訪問診療料(I)1の場合)より往診料の方が低く、訪問診療のほうが診療報酬自体は高く設定されています。

しかし、往診では夜間や深夜、休日に対応する場合等に手厚い加算が設定されています。一方、訪問診療は計画的な診療とはいえ、急変時は24時間を通して対応することが求められていますが、訪問時間を問わず診療報酬は一定とされています。

また、ややこしいのですが、訪問診療に似たような言葉で「在宅医療」というのもあります。これは医師が行う「訪問診療」に加えて、看護師や薬剤師、理学療法士などの医療関係者が在宅にて医療支援を行うことを意味します。このように、「訪問診療」よりも「在宅医療」の方が広い概念になります。

地域包括ケアシステムを説明した回で、今後はかかりつけ医や介護施設への通院・通所を経て、複数の医療従事者等による訪問診療・介護等が行われる流れになると書きました。

今後、訪問診療は地域包括ケアシステムを支える重要なインフラになると思われます。

しかし、訪問診療は24時間365日体制が基本で、医師等に大きな負担がかかる一方で、2024年4月から「医師に対する時間外労働上限規制」も適用予定であり、訪問診療を担う医師の確保が困難になる可能性があります。

今後、訪問診療に従事する医師等を確保するための何らかの施策が必要かもしれません。

訪問診療の体制が整備され、自宅での療養が増えることで、結果として在宅での看取りが増えるという流れになっていくといいですね!