これまで地域包括ケアシステムの記載でかかりつけ医の役割等について少し触れたので、今回はかかりつけ医について少し詳しくまとめてみます。
かかりつけ医とは、健康に関することを何でも相談でき、必要な時は専門の医療機関等を紹介してくれる身近にいて頼りになる総合的な能力を有する医師のことを言います。
かかりつけ医を持つことが推奨される背景には、高齢人口の増加に伴う医療費増加や大病院での勤務医不足・長い待ち時間などが挙げられます。
医療の効率化を図り、これらの問題を解消するため、診療所・病院等と大病院のそれぞれの役割を明らかにしようとしています。
具体的には、患者が外来にかかるとき、最初はかかりつけ医が診察し、一般的な治療では対応が難しい時は専門的治療を受けられる大病院を紹介してもらい、治療を終えて病状が安定したらまたかかりつけ医に戻るという仕組みです。
国はこの仕組みを浸透させるため、2018年4月から他の病院の紹介状なしに大病院(特定機能病院及び400床以上の地域医療支援病院)を受診する場合、初診時・再診時に一定額以上の負担を患者に求め、最初にかかりつけ医の診察を受けるように誘導しています。
また、前に書いた地域包括ケアシステムや2025年問題への対応として、介護と医療の連携による在宅医療の充実が求められていますが、この点でも外来と在宅医療をまたぐかかりつけ医機能が推進されています。
かかりつけ医機能は、かかりつけ医が自ら往診もしくは連携医療機関の協力で在宅医療を行い、患者と24時間の連絡体制を確保する機能です。
しかし、このような機能をもつかかりつけ医が増えないため、まずは患者がかかりつけ医をもつことが推進されているのです。
かかりつけ医をもつメリットとしては、①病気や健康問題を気軽に相談でき、的確な診断や高度な医療機関との連携、②認知症の早期診断やケアマネジャーとの連携、③主治医意見書(要介護認定申請に必要)の作成、④在宅の看取りや死亡診断書の作成、などが挙げられます。
一方、医療現場の医師からは、①夜間(24時間)対応するのは困難(特に開業医)、②専門分化が進む現在で一人の医師が全ての疾患に対処するのは困難、③最新の医療や技術を提供できない場合がある、と言ったデメリットを指摘する声もあります。これらがかかりつけ医が増えない原因とも考えられております。
もともとかかりつけ医の制度は、2014年の診療報酬改定で、地域包括診療料(医学管理等)と地域包括診療加算(再診料)という形で新設されました。
さらに、かかりつけ医の制度を後押ししようと、2018年度診療報酬改定で、機能強化加算(初診料)の制度も追加されました。
しかし、前者は院内処方が原則であったり、後者は在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院に限るとされていたりでなかなか要件の充足が難しいこともあり、十分に普及しているとは言い難い状況です。これらの要件の緩和は、普及のためには検討が必要と思われます(2020年の診療報酬改定では緩和の方向に進むようですが…)。
また、一定病床以上の有床病院が夜間・休日外来対応を引き受け、重症以外の昼間の外来対応は一定病床未満の有床病院や有床・無床診療所に分散させる等、それぞれの機能を明確に分けるような制度等を検討しないと、かかりつけ医の制度は浸透していかないように思います。
さらに、大病院の勤務医の負担がかかりつけ医に転嫁されただけという結果にならないように、かかりつけ医のワークライフバランスにも配慮する必要もあります。
かかりつけ医の制度は、地域包括ケアシステム構築を支える重要なインフラとなり、大病院での勤務医不足や長い待ち時間の解消につながる可能性があります。
かかりつけ医が患者の一般的な病気の治療・健康相談窓口、大病院との懸け橋、在宅医療への貢献という役割を担い、かかりつけ医の制度がバランスよく機能していくことを切に願います!