DPC方式と出来高払い方式

前回、診療報酬請求について書きましたが、今回は入院診療の診療報酬請求方式であるDPC方式と出来高払い方式についてもう少し詳しくまとめてみます。

DPC方式とは、包括医療費支払い制度方式のことで、入院期間中に治療した病気の中で最も医療資源を投入した一疾患のみに1日当たりの一定点数からなる包括評価部分(入院基本料、検査、投薬、注射、画像診断など)と従来どおりの出来高評価部分(手術、胃カメラ、リハビリなど)を組み合わせて計算する方式です。

DPC方式は厳密には、DPC/PDPS(Diagnosis Procedure Combination/Per-Diem Payment System)と言われます。
それぞれを分解して説明すると、DPC(Diagnosis Procedure Combination) は診断群分類、PDPS(Per-Diem Payment System) は1日当たり包括支払い制度のことであり、診療群分類ごとに定められた1日当たり包括金額を支払う制度ということがここから分かります。

一方、出来高払い方式とは、診療行為ごとの点数をもとに積上計算する方式です。

診療報酬請求は、外来診療と入院診療にレセプトを区別して請求します。

診療報酬請求は原則として、出来高払い方式ですが、入院診療については一部病院でDPC方式により請求できます。

DPC方式は、厚生労働省が定めた一定の基準を満たした病院に認められる制度ですので、それ以外の病院は出来高払い方式のみの請求となります。

さらに、DPC方式を採用できる病院にも程度があり、大学病院本院はⅠ群、大学病院本院に準じた診療密度と一定の機能を有すると考えられる医療機関についてⅡ 群、それ以外をⅢ群とされています。

DPC方式では、診断群分類別に平均在院日数が定められており、それを軸に3段階の1日当たり点数が設定されています。
在院日数に応じて、入院期間Ⅰ(平均在院日数の25パーセンタイル値までの期間)、入院期間Ⅱ(25パーセンタイル値から平均在院日数までの期間)、入院期間Ⅲ(平均在院日数から平均在院日数+標準偏差の2倍以上の30の整数倍の日数の期間)が定められており、これらの入院期間Ⅰ~Ⅲの通算した期間を特定入院期間といいます。特定入院期間を超えた日からは出来高払評価となります。
ここで、パーセンタイル値とは、小さいほうから数えて何番目の値であるかを示す統計上の表示方法です(例えば100人のうちの25パーセンタイル値は小さい方から25人目)。
各入院期間により点数が異なり、入院期間Ⅰの点数は、診断群分類毎の1日あたりの医療資源の平均的な投入量に15%上乗せした点数となり、かなり優遇されます。

出来高払い方式は医療行為の点数の総和で決まりますので、無用な検査や投薬が行われやすいという問題点がありますが、DPC方式は定額支払なので無用な検査や薬を減らせば病院利益が増加し、ひいては医療費抑制につながるというメリットがあります。裏返しとしてDPC方式は手抜き医療が起こる懸念があるという問題点がありますが、出来高払い方式は医療機関が必要と考える医療行為を行いやすいというメリットがあります。また、DPC方式は早い退院が促されたり患者を選別したりする可能性がある点もデメリットとして考えられます。

医師は患者の診療に全力を尽くしていると思うので、DPC方式のデメリットはあまり考えられないかもしれませんが、利益至上主義になると起こりうる可能性があるという程度だと思います。

医療費抑制と診療の質の維持は、一つ間違えば相反する結果になりがちですが、うまく両立できるように運用されて欲しいものです。現状では、医師の使命感や倫理観に頼らざるを得ない状況かもしれません。