介護保険制度における施設やサービス(その1)

これまで介護保険制度における居宅サービスや施設サービスについて少し触れたので、今回は介護保険制度における施設・サービスの具体的な内容について少し詳しくまとめてみます。

まず、施設サービスは、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院の施設があることを書きました。

これらは、名前が似ているので、区別がつきにくいというのが、正直な印象でしょう。

上記の施設のうち後ろに行くほど、医療的な管理の必要性が高い施設と言えます。

まず、介護老人福祉施設は、特別養護老人ホーム(特養)とも呼ばれ、原則として要介護3以上の認定を受けた高齢者が24時間体制で介護保険適用の介護サービスが受けられる介護施設のことを言います。「原則として」とあるのは、要介護1~2の方でも特別な事情がある場合のみ入所ができます。

なお、要支援の認定を受けた方は、居宅サービスの短期入所生活介護としてのショートステイによる利用が可能です。

介護老人福祉施設(特養)の入所者は、認知症や寝たきりの高齢者が大半を占めます。ケアプランに基づき日常生活上の介護や機能訓練を受けることとなります。

入所期間に制限はなく原則、終身利用が可能ですが、3ヵ月超の入院になった場合など、退去しなければならないケースもあります。

介護老人福祉施設(特養)は福祉系介護施設と言え、医師が常勤である必要がないこと(通常、嘱託の非常勤)もあり、経営母体は、原則として社会福祉法人(他は地方公共団体)となります。

次に、介護老人保健施設は、老健とも呼ばれ、要介護1以上の長期入院をしていた高齢者が入所して在宅復帰を目指し、医師による医学的管理の下で、介護保険適用の介護サービスが受けられる介護施設のことを言います。

なお、要支援の認定を受けた方は、居宅サービスの短期入所療養介護としてのショートステイによる利用が可能です。

介護老人保健施設(老健)の入所者は医学的な管理下で、看護、リハビリテーション、食事・入浴・排せつ等の日常的な介護サービスなどが提供されます。

入所期間は原則として3~6ヶ月の期間限定になっていますが、リハビリが進まず身体状態が回復していない場合や家族の受け入れ態勢が整わない場合など、入所制限期間内に自宅復帰できないケースもあります。

入所期間が限定されており、入所期間の制限がない介護老人福祉施設(特養)への入所待ち施設として利用している人もいます。

介護老人保健施設(老健)は医療系介護施設と言え、常勤の医師を1人以上配置(常勤換算方法で入所者の数を百で除して得た数以上) する必要があります。

経営母体は、医療法人、社会福祉法人、地方公共団体などになります。

介護医療院は、病院や診療所等に入院している要介護の高齢患者(利用者)に対して、施設サービス計画に基づいて、必要なサービスを提供する施設です。

療養上の管理・看護、ターミナルケア、医学的な管理が必要な介護ケア等の医療・介護のサービスの提供だけでなく、生活の場を提供する点が特徴です。

介護医療院は、介護と医療の両方が必要な高齢者が、長期に渡るサービスを受けることが想定されています。

介護医療院は医療機能を提供する介護施設と言え、当然ながら、常勤医師の配置が必要です。

最後に、介護療養型医療施設は、社会的入院(医療は不要だが家族の介護困難性から長期入院)の問題から紆余曲折を経て設置に至りましたが、その社会的役割を終え2023年度末までに廃止される予定です。介護医療院はその受け皿になることが期待されているという関係にあります。

介護老人福祉施設(特養)は主に社会福祉法人のみが運営しており、入所希望者の増加に施設の増加が追い付いていない状況が見て取れます。その結果、介護老人福祉施設(特養)への入所待機待ちの方が多く存在し、介護老人保健施設(老健)が入所待ちの施設として利用されている点も否めません。

以前書きましたが、介護老人福祉施設(特養)は、高齢者向け施設の中でも費用が安く、退所条件が厳しくないこともあって人気が高いため、止むを得ない部分もありますが、入所待機待ちの状態が早く解消してくれることを祈るばかりです。