相続における民法と相続税法の違い

前回までは法定相続人等についてまとめてみましたが、今回は相続における民法と相続税法の違いについて書きます。

相続における民法と相続税法では、相続人の数とみなし相続財産の2点が大きく異なるところです。

まず、相続人の数ですが、これは相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×相続人の数)に影響を及ぼすこととなります。

以前にも書きましたが、民法上は実子も養子も同じ扱いで法定相続人の数に人数制限はありませんが、相続税法上は、法定相続人の数に入れることのできる養子は、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までという制限が設けられています。孫を養子にすることも可能ですが、孫が支払う相続税は20%高くなります。

また、民法上は相続放棄をした場合、初めから相続人とならなかったものとみなされますが、相続税法上は相続放棄した場合も、放棄しなかったものとして相続人の数に含められます。

相続放棄により、相続人の数を増加させ基礎控除額を増やそうとするのを防止する狙いがあります。

次に、みなし相続財産ですが、これは相続財産に影響を及ぼすこととなります。

生命保険金や退職金・定期金等は、民法上では相続財産となりませんが、相続税法上はみなし相続財産とみなされます。被相続人が亡くなる前3年以内に贈与された財産や被相続人から相続時精算課税の適用を受け取得した財産も同様にみなし相続財産とされます。ここで退職金は死亡退職金、定期金は終身年金など定期的に支払われるものを言います。

なお、原則として法定相続人が相続税の申告義務を負いますが、生命保険金や遺言による遺贈等で、法定相続人以外に方がこれを取得した場合、申告義務者の範囲は法定相続人の範囲と異なることとなります。

相続税法上は税負担の公平性の観点から、担税力(税金を払う能力)に応じた負担を求めており、民法の規定とは一部異なる部分が出てきます。