前回まで相続財産の評価で取引相場のある株式についてまとめましたが、今回は取引相場のない株式の評価について書いていきます。
以前に書いたように、取引相場のない株式の評価は、細かな場合分けが必要で、その算定は非常に複雑です。
取引相場のない株式の評価は、主に(1)株主の判定による株式評価方式の判定、(2)会社規模の判定、(3)株式評価方式と会社規模による株価算定、(4)特定評価会社の判定、といった手順によって判定されます。
今回は、(1)株主の判定による株式評価方式の判定について、触れていきます。
株主の判定に関して、株主1人とその同族親族等(以下、同族株主)の議決権割合が30%以上あるかで判定していきます。
まず、議決権割合が30%未満の場合の株式評価方式として、(A)議決権割合15%未満の株主グループの株主、および、(B)議決権割合15%以上30%未満の株主グループの株主で、①取得後の議決権割合5%未満、②株主グループに中心的な株主がいる、③取得者が役員または申告期限までに役員予定者でない、という要件を満たす株主は、特例的評価方式で評価します。議決権割合15%以上30%未満の株主グループの株主で、左記①~③に該当しない場合は、原則的評価方式で評価します。
ここで、中心的な株主とは、相続時点で同族株主の有する議決権が15%以上である株主グループのうち、いずれかのグループで単独で議決権総数10%以上の議決権を有している株主のことを言います。
次に、議決権割合が30%以上の場合の株式評価方式として、(a)同族株主以外の株主、および、(b)①取得後の議決権割合5%未満、②株主グループに中心的な同族株主がいる、③取得者が中心的な同族株主でない、④取得者が役員または申告期限までに役員予定者でない、という要件を満たす株主は、特例的評価方式で評価します。左記に該当しない場合は、原則的評価方式で評価します。
ここで、中心的な同族株主とは、相続時点において同族株主の1人と配偶者、直系血族、兄弟姉妹及び1親等の姻族(同族関係者の会社でこれらの者の議決権が25%以上の会社含む)が議決権総数25%以上である場合の株主のことを言います。
原則的評価方式と特例的評価方式で評価される株価が変わってくるので、この判定を適切に行う必要があります。
次回も取引相場のない株式の評価について触れていきます。