相続財産の評価(その10)

前回まで相続財産の評価で取引相場のない株式の(2)会社規模の判定についてまとめましたが、今回は取引相場のない株式の(3)株式評価方式と会社規模による株価算定について書いていきます。

取引相場のない株式を評価するためのステップの3つ目として、(3)株式評価方式と会社規模による株価算定があります。評価方法は、前回まで書いた(1)株主の判定による株式評価方式の判定でまず原則的評価方式と特例的評価方式に分け、そのうち原則的評価方式は(2)会社規模の判定での会社区分に応じてさらに分けます。一方、特例的評価方式は、配当還元方式で評価します。配当還元方式は過去2年間の平均配当金額を一定の利率(10%)で還元した金額に1株当たり資本金等を50円で除した金額を乗じて評価します。

原則的評価方式による評価については、以下で会社区分ごとに場合分けします。

大会社の場合は、原則として類似業種比準方式で評価しますが、例外的に純資産価額方式による評価を選択することも可能です。

中会社の場合は、原則として類似業種比準方式と純資産価額方式との併用方式で評価しますが、例外的に純資産価額方式による評価を選択することも可能です。

中会社の類似業種比準方式と純資産価額方式との併用方式については、前回書いた中会社(0.9)・中会社(0.75)・中会社(0.6)ごとにさらに区別します。中会社(0.9)の場合は類似業種比準価額×90%+1株当たりの純資産価額×10%、中会社(0.75)の場合は類似業種比準価額×75%+1株当たりの純資産価額×25%、中会社(0.6)の場合は類似業種比準価額×60%+1株当たりの純資産価額×40%の比率でそれぞれ算定します。

小会社の場合は、原則として純資産価額方式で評価しますが、例外的に純類似業種比準価額×50%+1株当たりの純資産価額×50%の併用方式による評価を選択することも可能です。

なお、上記での中会社・小会社で出てくる純資産価額方式に関して、議決権割合50%以下の同族株主グループに属する株主は純資産価額に80%を乗じた金額で評価できます。

次に、類似業種比準方式と純資産価額方式の計算方法については、以下の通りです。

類似業種比準方式は、類似業種の株価に、一株当たりの配当金額、利益金額及び純資産価額(簿価)を3で割った割合と斟酌率を乗じて計算する方式です。

斟酌率は、大会社0.7、中会社0.6、小会社0.5で計算されます。

類似業種の株価は、①相続月以前3ヶ月間の各月の類似業種の株価のうち最も低いものを原則としますが、これに②類似業種の前年平均株価、③相続月以前2年間の平均株価も加え、①~③のうちで最も低いものとすることもできます。

一株当たりの配当金額は、直前期末以前2年間の剰余金の平均配当金額に対して直前期末の発行済株式数で除した金額を相続年の類似業種の一株当たり配当金額でさらに除して計算します。

一株当たりの利益金額は、法人税の課税所得金額+受取配当等の益金不算入額+損金算入繰越欠損金控除額の直前期末と過去2年平均の少ない金額に対して直前期末の発行済株式数で除した金額を相続年の類似業種の一株当たり年利益金額でさらに除して計算します。

一株当たりの純資産価額は、資本金等の額+利益積立金額の直前期末と過去2年平均の少ない金額に対して直前期末の発行済株式数で除した金額を相続年の類似業種の一株当たり純資産価額でさらに除して計算します。

上記の発行済株式数は、一株当たりの資本金等の額を50円として算出した発行済株式数になります。

一方、純資産価額方式は、資産の相続税評価額の合計-負債の相続税評価額の合計-評価差額に対する法人税額等相当額の金額を発行済株式数(自己株式数除く)で除して計算する方式です。

評価差額に対する法人税額等相当額は、相続税評価額による純資産価額から帳簿価格による純資産価額(現物出資等受入れ差額があれば含む)を控除した金額に37%を乗じた金額になります。

相続税評価額は財産評価基本通達の定めにより評価した金額で、帳簿価額は相続時点の税務計算上の帳簿価額ですが、その算定上の主な留意点としては以下が挙げられます。

資産のうち前払費用、繰延資産等は資産性がないとして相続税評価額・帳簿価額から除外し、固定資産は税務上の減価償却累計額を控除して帳簿価格とします。また、負債のうち引当金は相続税評価額・帳簿価額から除外します。

次回も取引相場のない株式の評価について触れていきます。