相続財産の評価(その19)

前回は、相続財産の評価で宅地の評価方法についてまとめましたが、今回は特殊な宅地の評価方法について書いていきます。

特殊な宅地の評価方法のうち、主なものとして、①私道の用に供されている宅地の評価、②土地区画整理事業施行中の宅地の評価、③造成中の宅地の評価、④セットバックを必要とする宅地の評価、⑤利用価値が著しく低下している宅地の評価などがあり、今回はこれらを中心に説明します。

まず、上記①私道の用に供されている宅地の評価は、路線価方式または倍率方式による価額の30%で評価します。ただし、私道が不特定多数の通行用であるときは評価しません。

上記②の土地区画整理事業施行中の宅地の評価は、土地区画整理事業の施行地区内にある宅地について仮換地の価額相当額で評価します。ただし、その仮換地の造成工事が施工中で工事完了までの見込期間が1年超の仮換地は、造成工事が完了したものとして評価した価額の95%相当額で評価します。なお、(a)仮換地について使用または収益の開始日を別に定めるとして使用または収益を開始することができない、(b)仮換地の造成工事が行われていない、等の事情がある場合は、従前の宅地の価額により評価します。

上記③の造成中の宅地の評価は、土地の造成工事着手直前の地目により評価した相続時点の価額に、宅地造成の費用現価(相続時点までに投下した費用額を相続時点の価額に引き直した額の合計額)の80%相当額を加算した金額で評価します。

上記④のセットバックを必要とする宅地の評価は、将来、建物の建替時等に提供しなければならないセットバック対象の2項道路に面している場合、セットバックのない通常の宅地の評価額から、その評価額のセットバック部分の面積割合に対応する価額に70%を乗じた金額を控除して評価します。

上記⑤の利用価値が著しく低下している宅地の評価は、通常の宅地の評価額から、その評価額の利用価値が低下している部分の面積割合に対応する価額に10%を乗じた金額を控除して評価することができます。利用価値が著しく低下している例としては、(a)道路より高い位置にある宅地または低い位置にある宅地で付近の宅地に比べて著しく高低差のあるもの、(b)地盤に甚だしい凹凸のある宅地、(c)震動の甚だしい宅地、(d)左記(a)~(c)の宅地以外の宅地で、騒音、日照阻害、臭気、忌み等で取引金額に影響を受けると認められるもの、等が例として挙げられます。ただし、路線価または固定資産税評価額・倍率に利用価値の著しく低下している状況が考慮されている場合には適用されません。

参考までに、文化財建造物である家屋の敷地である宅地の評価についても定めがあり、通常の宅地の評価額から、その評価額に一定の控除割合(重要文化財:0.7、登録有形文化財0.3、伝統的建造物0.3)を乗じた金額を控除して評価します。この宅地は倍率方式により評価され固定資産税評価額が付されていない場合は、状況が類似している付近の宅地の固定資産税評価額をベースに、位置・形状等の条件差を考慮して固定資産税評価額に相当する額を算出して評価します。

次回以降も相続財産の評価について触れていきます。