前回までは、小規模宅地等の特例の概要についてまとめてきましたが、今回からは小規模宅地等の適用要件等について書いていきます。
前回書いた小規模宅地等の特例の4分類(①特定事業用宅地等、②特定同族会社事業用宅地等、③貸付事業用宅地等、④特定居住用宅地等)のうち、今回は①特定事業用宅地等について説明します。
まず、①特定事業用宅地等ですが、相続開始直前における被相続人等の事業用(不動産貸付業、駐車場業等を除く)の宅地等で、(a)被相続人の事業用の宅地等、(b)被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業用の宅地等、それぞれが適用要件すべてに該当し、被相続人の親族が相続または遺贈により取得したものをいいます。
上記の適用要件として、(a) ・(b)それぞれ以下のようになります。
上記(a)被相続人の事業用の宅地等では、宅地等上で営んでいた被相続人の事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、かつ、申告期限まで事業を営んでいること(事業承継要件)と宅地等を相続税の申告期限まで保有していること(保有継続要件)が必要となります。
上記(b)被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業用の宅地等では、相続開始の直前から相続税の申告期限まで、その宅地等の上で事業を営んでいること(事業承継要件)と宅地等を相続税の申告期限まで保有していること(保有継続要件)が必要となります。
この①特定事業用宅地等の適用要件を満たすと、限度面積400㎡まで宅地等の評価額が80%減額されます。
なお、被相続人から相続または遺贈により財産を取得した人が、①特定事業用宅地等で特例の適用を受ける場合には、被相続人から相続または遺贈により財産を取得した全員が、「個人の事業用資産についての相続税の納税猶予及び免除」の適用を受けることができません。
また、平成30年度税制改正において、平成31年4月1日以後の相続または遺贈により取得した宅地等で、相続開始前3年以内に新たに事業用となった宅地等(3年以内事業宅地等)はこの特例の適用対象外となりました。
ただし、3年以内事業宅地等について、一定の規模以上の事業を行っていた場合は該当しないと言う例外規定があります。ここで、一定の規模以上の事業とは、被相続人等保有の事業用資産(宅地等上に存する建物・附属設備・構築物・その他減価償却資産)の相続開始時の価額合計額を新たに事業用となった宅地等の相続開始時の価額で除した割合が15%以上である場合を言います。
また、平成31年4月1日から令和4年3月31日までの間に相続または遺贈により取得した宅地等のうち、平成31年3月31日までに事業の用に供された宅地等については、3年以内事業宅地等に該当しないとする経過措置がある点も補足しておきます。
次回も小規模宅地等の適用要件等について触れていきます。