小規模宅地等の特例(その5)

前回は小規模宅地等の適用要件等③についてまとめてきましたが、今回は小規模宅地等の適用要件等④について書いていきます。

以前書いた小規模宅地等の特例の4分類(①特定事業用宅地等、②特定同族会社事業用宅地等、③貸付事業用宅地等、④特定居住用宅地等)のうち、今回は④特定居住用宅地等について説明します。

まず、④特定居住用宅地等ですが、被相続人等の居住用の宅地等で、適用要件すべてに該当し、被相続人の親族が相続または遺贈により取得したものをいいます。なお、宅地等が2以上ある場合、主として居住用としていた1つの宅地等に限定されます。

上記の適用要件は、(1)被相続人の居住用の宅地等で、①被相続人の配偶者、②被相続人が居住用としていた一棟の建物に居住していた親族、③左記①及び②以外の親族、(2)被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の居住用の宅地等で①被相続人の配偶者、②被相続人と生計を一にしていた親族でそれぞれ異なります。

まず、(1)被相続人の居住用の宅地等ですが、以下のようになります。

上記(1)①被相続人の配偶者の場合ですが、取得者ごとの要件はありません。上記(1)②被相続人が居住用としていた一棟の建物に居住していた親族の場合ですが、相続開始直前から申告期限まで引き続き建物に居住し、かつ、その宅地等を相続開始時から申告期限まで保有していることが必要です。上記(1)③左記①及び②以外の親族の場合ですが、(a)居住制限納税義務者または非居住制限納税義務者のうち日本国籍を有しない者ではない、(b)被相続人に配偶者がいない、(c)相続開始直前において被相続人の居住用家屋に居住していた被相続人の相続人(相続放棄があった場合は放棄なしとみなす)がいない、(d)相続開始前3年以内に日本国内の取得者、取得者の配偶者、取得者の三親等内の親族または取得者と特別の関係がある一定法人(発行済株式総数等の50%超保有等)が所有する家屋(相続開始直前における被相続人の居住用家屋を除く)に居住したことがない、(e)相続開始時に取得者が居住用家屋を相続開始前までに所有したことがない、(f)宅地等を相続開始時から申告期限まで保有、のすべてを満たすことが必要です(いわゆる家なき子の特例)。

次に、(2)被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の居住用の宅地等ですが、以下のようになります。

上記(2)①被相続人の配偶者の場合ですが、取得者ごとの要件はありません。上記(2)②被相続人と生計を一にしていた親族の場合ですが、相続開始前から申告期限まで引き続き家屋に居住し、かつ、宅地等を申告期限まで保有していることが必要です。

ここで、(1)の「被相続人の居住用」について、被相続人が相続開始直前に老人ホーム等に入居していた場合も被相続人の居住用の宅地等として認められる場合が問題となります。この場合、①被相続人が要介護認定または要支援認定を受けており、②養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、認知症対応型老人共同生活援助事業が行われる住居、介護老人保健施設、介護医療院、サービス付き高齢者向け住宅等に入居している、という要件を満たしていれば、被相続人の居住用の宅地として認められます。

また、上記(1)②被相続人が居住用としていた一棟の建物に居住していた親族の場合における建物が、区分所有建物のケースでは、被相続人が居住用としていた部分に、それ以外の建物のケースでは、被相続人または被相続人の親族が居住用としていた部分に親族が居住している必要があります。

この④特定居住用宅地等の適用要件を満たすと、限度面積330㎡まで宅地等の評価額が80%減額されます。

ここまで相続について説明してきましたが、これが最後です。次回から贈与について触れていきます。