事業承継税制(法人版事業承継税制#8)

前回は事業承継税制の法人版事業承継税制の相続税に係る納税猶予・免除制度の③相続税の申告期限までの間→④相続税の申告期限についてまとめましたが、今回は法人版事業承継税制の相続税に係る納税猶予・免除制度の⑤納税猶予期間中について書いていきます。

上記の⑤納税猶予期間中について、(1)非上場株式等の継続保有等と(2)継続届出書の提出に留意する必要があります。

まず、(1)非上場株式等の継続保有等ですが、申告後も制度適用の非上場株式等を保有すること等により、納税猶予が継続されます。

ただし、制度適用の非上場株式等を譲渡するなど一定の場合(確定事由)には、納税猶予されている相続税の全部または一部について利子税と併せて確定事由該当後2ヶ月以内に納付する必要があります(「免除対象贈与」に該当する場合、一定部分の納税猶予税額を免除) 。

そこで、納税猶予されている相続税を納付する必要がある主な場合について詳述します。

なお、以下の各ケースのA~Cは、「A:納税猶予されている相続税全額と利子税をあわせて納付(制度適用は終了)」、「B:納税猶予されている相続税のうち譲渡等した部分に対応する相続税と利子税をあわせて納付(譲渡等部分に対応しない相続税は納税猶予が継続)」、「C:納税猶予が継続」となります。

主なケースとして、(a)制度適用の非上場株式等の一部譲渡等(免除対象贈与を除く)した場合は、(特例)経営承継期間内はA、(特例)経営承継期間経過後はBとなります。(b) 後継者が会社の代表権を有しなくなった場合は、(特例)経営承継期間内はA、(特例)経営承継期間経過後はCとなります。(c)会社が資産管理会社に該当した場合(一定要件を満たす会社を除く)は、(特例)経営承継期間内・(特例)経営承継期間経過後ともにAとなります。(d)一定の基準日における雇用の平均が「相続時の雇用の8割」を下回った場合は、(特例)経営承継期間内はC(一般措置の場合はA)、(特例)経営承継期間経過後はCとなります。

ここで、「(特例)経営承継期間」とは、制度適用に係る相続税の申告期限翌日から、後継者の死亡日前日と(x)「後継者の最初の制度適用に係る相続税の申告期限の翌日以後5年経過日」または(y)「後継者の最初の「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除」適用に係る贈与税の申告期限の翌日以後5年経過日」のいずれか早い日までの期間をいいます。

次に、(2)継続届出書の提出ですが、制度適用を継続するために継続届出書に一定書類を添付して所轄の税務署へ提出する必要があります。なお、継続届出書を不提出の場合、猶予されている相続税の全額と利子税を納付する必要があります。

継続届出書については、(特例)経営承継期間内は毎年、当該期間経過後は3年ごとに提出します。円滑化法の認定を受けた会社も(特例)経営承継期間内は毎年、都道府県知事に対し一定書類を提出する必要があります。

次回も事業承継税制について触れていきます。