前回は事業承継税制の個人版事業承継税制の相続税に係る納税猶予・免除制度の③相続税の申告期限までの間→④相続税の申告期限についてまとめましたが、今回は個人版事業承継税制の相続税に係る納税猶予・免除制度の⑤納税猶予期間中について書いていきます。
上記の⑤納税猶予期間中について、(1)特例事業用資産の継続保有等と(2)継続届出書の提出に留意する必要があります。
まず、(1) 特例事業用資産の継続保有等ですが、申告後も事業継続し、特例事業用資産(制度適用の特定事業用資産)を保有すること等により、納税猶予が継続されます。
ただし、制度適用の事業を廃止するなど一定の場合(確定事由)には、納税猶予されている相続税の全部または一部について利子税と併せて確定事由該当後2ヶ月以内に納付する必要があります。
納税猶予されている相続税を納付する必要がある主な場合として、「(A)相続税の全部と利子税の納付が必要な場合」、「(B)相続税の一部と利子税の納付が必要な場合」があります。
まず、(A)相続税の全部と利子税の納付が必要な場合として、①事業廃止、②資産管理事業または性風俗関連特殊営業に該当、③特例事業用資産に係る事業所得の総収入金額がゼロ、④青色申告の承認取消、⑤青色申告の承認申請却下、があります。
次に、(B)相続税の一部と利子税の納付が必要な場合として、特例事業用資産を事業用に使用しなくなった場合に、その部分に対応する相続税と利子税を納付します。
ただし、①特例事業用資産を陳腐化等の事由で廃棄した場合で税務署に書類等を提出、②特例事業用資産を譲渡した場合で譲渡日から1年以内に対価で新たな事業用資産を取得見込として税務署長承認(取得の対価相当部分に限る)、③特定申告期限の翌日から5年経過後の会社設立に伴う現物出資ですべての特例事業用資産を移転したことにつき税務署長承認(適用後の確定事由は、原則として「非上場株式等についての相続税の納税猶予(法人版事業承継税制)」における経営承継期間後の確定事由と同様)、の各場合は納税猶予が継続します。
ここで、「特定申告期限」とは、後継者の最初の制度適用に係る相続税の申告期限または最初の「個人の事業用資産についての贈与税の納税猶予および免除」適用に係る贈与税の申告期限のいずれか早い日をいいます。
次に、(2)継続届出書の提出ですが、制度適用を継続するために継続届出書に一定書類を添付して3年ごとに所轄の税務署へ提出する必要があります。なお、継続届出書を不提出の場合、猶予されている相続税の全額と利子税を納付する必要があります。
次回も事業承継税制について触れていきます。