前回は事業承継税制の個人版事業承継税制の相続税に係る納税猶予・免除制度の⑤納税猶予期間中についてまとめましたが、今回は個人版事業承継税制の相続税に係る納税猶予・免除制度の⑥後継者の死亡等について書いていきます。
上記の⑥後継者の死亡等については、免除届出書・免除申請書の提出に留意する必要があります。
後継者の死亡等があった場合、免除届出書・免除申請書を提出することで、死亡等の際における納税猶予されている相続税の全部または一部について納付免除されます。
納税猶予されている相続税の納付免除される主な場合として、(a) 後継者が死亡した場合、
(b)特定申告期限の翌日から5年経過日後に特例事業用資産のすべての免除対象贈与(特例事業用資産が後継者に贈与され、「個人の事業用資産についての贈与税の納税猶予及び免除」の適用を受ける贈与)を行った場合、(c)事業継続不可についてやむを得ない理由がある場合、(d)破産手続開始決定などがあった場合、(e)事業継続困難な一定事由が生じた場合で特例事業用資産のすべての譲渡・事業の廃止をした場合、が挙げられます。
ここで、上記(c)の「やむを得ない理由」とは、[1]精神保健および精神障害者福祉に関する法律の規定により精神障害者保健福祉手帳(障害等級が1級)の交付を受けたこと、[2]身体障害者福祉法の規定により身体障害者手帳(身体上の障害の程度が1級または2級)の交付を受けたこと、[3]介護保険法の規定による要介護認定(要介護状態区分が要介護度5)を受けたこと、のいずれかに該当する状態になったことをいいます。
また、上記(e)の「事業継続困難な一定事由」が生じた場合の納税猶予額の免除ですが、事業継続困難な一定事由が生じた場合で、特例事業用資産等の全部の譲渡等または事業廃止の場合は、対価額(譲渡等の時の相続税評価額50%相当額が下限)を基に贈与(相続)税額等を再計算し、再計算した税額と過去5年間の必要経費不算入対価等の合計額が当初の納税猶予税額を下回る場合には、その差額は免除されます(再計算した税額は納付)。
ここで「事業継続困難な一定事由」とは、特例事業用資産等に係る事業について、①直前3年中2年以上、事業所得が0未満、②直前3年中2年以上、事業に係る総収入金額が前年を下回る、③後継者が心身の故障等で事業従事不可、といった場合を言います。また、「必要経費不算入対価等」とは、特別関係者(後継者の親族等)が事業従事その他の事由により後継者から支払を受けた対価・給与であって、事業所得の計算上必要経費に算入されるもの以外のものをいいます。
今回で個人版事業承継税制は終了で、事業承継税制についての記載も終わりになります。