前回までは事業承継税制についてまとめましたが、今回からは趣向を変えて、医療機関の成長段階について書いていきます。
まず、医療機関の成長段階としての最初のステップは、個人事業としてのクリニックを開業することになるでしょう。
保健所に診療所開設届を提出するとともに、保険医療機関となるため厚生局に保険医療機関指定申請書を提出する等します。
そして、無事にクリニックを開設でき、その後、順調にクリニックを経営していくと、売上から経費を引いた利益(所得)が多額になる場合があるでしょう。また、ご子息が医師になった場合等、クリニックをご子息に承継することも視野に入れる必要があるでしょう。
このような場合、事業に関する税金の節税目的やご子息への事業承継等を考慮して、医療法人化(医療法人成り)します。
その後さらに、医療法人が多数の分院を出したり、有床の病院を買収などしたりして、負債額が50億円以上または事業収益(売上)が70億円以上になった場合、その医療法人は公認会計士または監査法人の法定の会計監査を受ける必要があります。
また、負債額が20億円以上または事業収益(売上)が10億円以上になった社会医療法人も、同様に公認会計士または監査法人の法定の会計監査を受ける必要があります。
法定の会計監査は、公認会計士または監査法人以外が実施することはできず、税理士は実施することはできません。また、医療法人の監事や税務顧問も会計監査人を兼任することはできません。
法定の会計監査の対象になった医療法人にその旨を伝えたところ、当法人は監事が公認会計士とか、税務顧問が公認会計士資格を持つ税理士とかで大丈夫です、などの回答をよく耳にしますが、これは間違いです。すぐには兼任できません。
監事や税務顧問の公認会計士が法定の会計監査を担当する場合は、独立性の観点から一定期間より前に退任しておく必要があります。
ただ、最初に会計監査を担当する公認会計士は、新しい人ではなく、医療法人の実情に詳しい人に任せたいという意見もあるでしょう。
ですので、法定の会計監査の対象になる医療法人を目指すなら、監事を公認会計士するか、税務顧問に公認会計士資格を持つ税理士にしておくと、将来的には安心かもしれません。
もちろん、法定の会計監査の対象になる状況に近付いてきたら、独立性の観点から監事や税務顧問を一度退任する必要があるのは言うまでもありません。